ゲイでノンセクシャル~人生の雨宿り~

雨ばかりの人生に、雨宿りができる場所を作りたい

同性婚って違憲?

  今年の年初めに、同性婚が認められていないことが違憲だとして、

損害賠償を求めて一斉訴訟を起こす、という記事が話題になりました。

(リンクとして毎日新聞さんを使わせていただきます)

mainichi.jp

 おお、とうとう動き出すのか、と思った人も多いと思います。

でもふと疑問に思うこともあるのではないのでしょうか?

 

同性婚を主張するのに損害賠償を求める?

 

このごもっともな疑問を法学部としてできる限り分かりやすく解説します!

裁判とは?

 そもそも、裁判と聞くとどんなイメージがありますか?

犯罪をしてしまった人を、法廷に呼んで刑を言い渡す……こんなイメージが

あると思います。これは「刑事裁判」と呼ばれる裁判です。

 もう1つ思い浮かぶのは、先ほども上げた損害賠償を求める裁判ですが、

これは「民事裁判」と呼ばれる刑事裁判とは別の種類の裁判です。

また、少年犯罪や離婚の申し立て(調停と呼ばれる説得が行われます)

「家事裁判」というこれまた別の裁判なんです。

 色んな裁判の種類があるといっても、基本は同じ裁判所で行われます。

日本は「三審制」と呼ばれる裁判制度が取られており、

家庭裁判所や地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所のように、だんだん規模が

大きな裁判所に進んでいくのが特徴です。

(最後が最高裁判所じゃないこともあります)

家事裁判は家庭裁判所で行われますが、民事と刑事は基本は地方裁判所から

スタートすることが多いです。(軽い犯罪、事件の場合家庭裁判所や

簡易裁判所が最初のこともあります)

 法律の世界(特に「判例」と呼ばれる過去の裁判の記録)では、

1番最初の裁判を第一審、2回目を原審(厳密に言えば原審は1つ前の裁判のこと)

3回目の最高裁判所の裁判を最判ということがあります。

 下された判決に納得がいかない場合は、3回まで裁判をしてもらえるので、

より精密に、平等に裁判が受けられる権利があるんですね。

(ちなみに一回目の不服申し立てを控訴、2回目を上告と言います。

細かな違いはありますが、基本的にはこの認識で大丈夫です)

 また、最高裁判所は少し特殊で「法律審」と呼ばれることもあります。

これは法律が違法か合法か、裁判になっている問題の行為が

適法なのか、違法なのかのみを判断するからです。

 反対に、最高裁判所以外は「事情審」と呼ばれ、何日の何時にこういう

事件があった、こういう証言がある、といった事実に関することも

扱うからです。つまり、最高裁判所は今までの裁判の中で挙げられた

事実を用いて、法律の良し悪しを判断するんですね。

 漢字だらけ、専門用語だらけの面倒な仕組みですが、要点をまとめると

 

  • 裁判には民事、刑事、家事の3種類がある。
    (家事と少年裁判を分ける考え方もある)
  • 日本の場合「三審制」に基づいて、三回まで裁判ができる
  • 最高裁判所は、法律の合法違法のみを判断する「法律審」であり、
    それ以外は、事件の概要や事実も扱う「事実審」である
  • 1回目の不服申し立てを控訴、2回目を上告という
 
これだけ抑えれば十分だと思います。

もう少し詳しく

 さて、基本的な知識を紹介したところでもう少し中身を見ていきたい

と思います。刑事事件は、検察官が起訴(裁判を起こすこと)をします。

これに対し、民事事件は被害者もしくはその家族など関係が深い人が

起訴をします。

(これは被害者が死んでしまっても裁判ができるようにするためです)

刑事裁判は、犯罪が起こると容疑者が逮捕され、その流れで裁判が

開かれるのに対して、民事裁判は、被害者が裁判を起こそうと行動して

初めて裁判が開かれます。

 例として交通事故で人をはねてしまったとしましょう。

人を車ではねてしまえば、刑事事件として扱われ、道路交通法や刑法に

基づいて、過失運転致死傷罪や傷害の罪、場合によっては殺人未遂に

問われることもあるでしょう。不起訴になることで裁判にならないことは

ありますが、被害者のひとには、起訴するか不起訴にするのかの選択の権利は

なく、検察官だけがその権利を持っています。

 一方、被害者には治療費や慰謝料などを請求する権利があります。

この場合、刑事裁判ではなく民事裁判として起訴できるんです。

ただ、あくまで権利であり、訴訟しなくてもいいんです。

車の修理費と治療費をお互いにそれぞれで払うことで合意する、

加害者側から慰謝料の提示があった、というように民事事件には

交渉、和解の余地があります。裁判をしたくなければ、しなくても

いいのです。

(ちなみに、法律の世界の「和解」は円満に解決という意味ではなく、

仕方なく手を打ってあげる「妥協」のニュアンスがあるので、気を付けましょう。)

 そのため、刑事裁判では無罪や不起訴になった事件であっても、

民事裁判では慰謝料や治療費を支払うように命じられることもあります。

裁判はあくまで事件解決の最終手段なのです。

 そろそろ本題に

 裁判について大方解説したところで、忘れかけていた本題に

いきたいと思います。なぜ同性婚が違憲かを判決してもらわず、

損害賠償を求めたのか?それは、裁判のルールがあるからです。

 裁判を行っても、判決すらしてくれないことがあります。

それは、大きく分けると

「本人が何らかの損害を受けていない場合」

「真、善、美などの判決をさせられた場合」

「法律に従って裁判の手続きが成されなかった場合」

の3つがあります。

 まず、「本人が損害を受けていない場合」ですが、これは

日本の裁判が「主観訴訟」しか認めていないからです。

自分が損害、不利益をうけて初めて裁判を起こす権利を得るということです。

 例えば、「総理大臣が靖国神社に参拝するのは政教分離に反する」と

よく耳にしますが、反するからといって別に日常生活に支障がでるわけ

でもなく、迷惑に感じることもないでしょう。そのため、

「政教分離だ!」と訴訟することは基本的にはできないんです。

ただ、税金を使って神社にお金を支払っているとなると、少なからず自分にも

影響が出てくるでしょう。こういった普通なら受け付けてもらえない事案を、

裁判で扱ってもらう手法を「客観訴訟」と呼び、違憲の審議をしてもらえる

数少ない方法となっています。

 次に「真、善、美などの判決をさせられた場合」ですが、これは

誰にもわかりえないことや、公平に判断を下すことができないことを

扱わないようにするためです。

 例えば、直してほしくなかった家の塀を勝手にお隣さんが直してくれた、

これはいいことだろうか?悪いことだろうか?こういった判決はできません。

そのため、よく勘違いされるのですが、離婚を裁判で申し出た場合、

どっちの方が悪いか、どっちに責任があるのか?は判決できないんです。

 そのため、調停によって和解を促すことや親権の所在、養育費の支払いなど、

判決できそうなことについては、持っている財産、収入、法律で定められた事柄

(戸籍、続柄など)などの客観的に見て誰でもわかることを判断材料にし、

調査官や面接の資料など主観的なことを一部考慮しつつ総合的に判断するのが

一般的です。(この「総合的に判断」は、判例でよく出て来ます)

 裁判所は、ずばっと真偽を判定してくれるわけでなく、今回の事件での

被告と原告(訴えられた側と訴えた側のことです)の主張に返答をする場所です。

そのため、同じような事件であっても、判決結果が変わってしまうこともあります。

 最後の「法律に従って裁判の手続きが成されなかった場合」は、その文の

通りです。正しい手続きをしない人に、裁判を受ける資格はないということです。

つまりどういう事?

 これらを踏まえて同性婚の訴訟を考えてみると、残念ながら

「同性婚がないことは悪いことだ」とは主張できません。

これはルール2つ目の真偽や善悪に関する内容だからです。

また、同性婚の制度を作ってくれない国が悪いと直接言うこともできません。

「国が悪い」ということを審議してもらえないからです。

 また、直接同性婚がないことは違憲だ、と最高裁判所に訴えることは

できません。三審制に基づき、正しい手順を踏まないと裁判してくれない

からです。(これはルール3つ目ですね)

そのため、同性婚の制度がないことで不利益を被っているという形で

損害賠償を求めることで、「客観訴訟」をしたと捉えることができそうです。

 同性婚がないことで不利益を受けている人たちがいます、といっても

「あなた自身が不利益を受けていないならダメ」と言われてしまうので、

「私たち同性カップルは不利益を受けています」と自ら起訴したんですね。

(これはルール1つ目の主観訴訟に入ります)

 そのため損害賠償でお金を得ることが目的でなく、判決をしてもらうことが

目的です。また、自分たちの不利益を解消するというよりは、同性婚の

法律を変えてもらうことで、みんなに利益があるようにすることが目的

でしょう。(本当に勇気ある素敵な行動だと思います。)

 実は裁判所で違憲判決がされても、国会が法律を変える義務はないんです。

これは三権分立(実際は三権分立と呼べるのかは怪しいですが……)

基づいているからです。しかし、義務はないとはいえ違憲と言われたものを

放置するわけにはいきませんから、ほぼ強制するようなものでしょう。

 また、法律には取り締まるだけでなく、国の意見表明の効果があります。

(記事を書いたのでリンクを貼っておきます)

www.life-amayadori.com

同性婚について、国がどう考えているのかが今回の判決によって

明らかになるのです。ただ、始めは損害賠償が認められるかがメインになり、

同性婚が違憲かどうかは議論の対象にならないと思われます。

最高裁判所まで行かないと違憲かどうかがはっきりとしないので今後の進展に

期待が高まりますね。

(僕が同性婚についてどう思っているのかは、また別の記事で書きます)

最後に

今回できる限りかみ砕いて解説したつもりですが、それでも難しいところが

いっぱいあると思います。質問や疑問があればコメントしてください。

わかる範囲でお答えしたいと思います。

 また、僕は法律を学んだばかりのひよっこなので、間違えているところや

解釈が違うところも多々あるかと思います。意見やご指摘がありましたら、

遠慮なく言ってください。