ゲイでノンセクシャル~人生の雨宿り~

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法律と慣習、不文法の関係

 世の中にはたくさんの法律がありますが、それと同じぐらい

慣習化したルールがあります。法律というと、何となく六法全書のような

書物に書かれた条文があるのを思い浮かべる人がいると思いますが、

実は文字として書かれていない「不文法」という法律が存在し、

慣習もその1つです。なんで文章にしないの?と思う方もいると思いますが、

文章にすると不具合が起こるからです。

 例えば、「学校の授業中に飲食をしてはいけない」という校則があるとします。

(不文法に対して、文章になっている法律を成文法と言います)

例え文章化されていなくても、慣習として授業中に飲食してはいけないと

思っている人がほとんどだと思います。このように、慣習はみんなが守るべきだと

共有されると、拘束力を持つようになるんですね。

 話を戻すと、昼休み直前の授業は、みんな空腹であってもお弁当を食べる人は

ほとんどいないと思います。でもこの「飲食」というのはどこまで規制している

のでしょうか?

 近年は熱中症対策のために、授業中であっても水分を取っていいことに

なっている学校もあります。お水や麦茶なら文句は言われないと思いますが、

スポーツドリンクはどうでしょうか?もっと踏み込んでジュースならどうでしょう?

炭酸飲料なら?コーヒーなら?おそらくダメだという人が多いと思います。

 これは、「水分を取る」という目的のために授業中であっても、飲み物を

飲むことを許可したからです。ジュースや炭酸飲料、コーヒーでは

「水分を取る」ことには間違いないのですが、それよりも嗜好品として楽しむ、

美味しく飲むという面が強くなるでしょう。

 このように、法律やルールの解釈には「形式」「実質」の2種類があります。

 形式的に見ると、コーヒーであってもジュースであっても飲み物であることには

違いないのでOKということになります。

 反対に実質的に見ると、水分補給に適した飲み物でなければ飲み物を許可した

意味がなくなってしまうので、コーヒーやジュースはダメということになります。

 このように、法律やルールが作られた目的を確認することはとっても大切なので、

ほとんどの法律の1条は、その法律が作られた目的について書かれるのです。

 ではそれを踏まえてもう一度「学校の授業中に飲食をしてはいけない」という

規則を見てみましょう。この規則は、おそらく授業に集中するため、

ものを食べながら人の話を聞くことは行儀が悪いから、我慢する能力を養い

自制心を育むため、など色々な理由で生まれたと思います。

ただ、授業中にお弁当を食べたからといって犯罪だ!とは言えませんし、

どちらかというと絶対に守るべきものというよりは、道徳やマナーの類い

だと思います。「こうあるべきだ」という道徳まで規則にしてしまうと、

人によって解釈がずれてしまう恐れがあります。

 例えば、ガムをかむと集中力が上がるし、眠気覚ましになるから、

ガムなら授業中に食べてもいいと思っている先生もいるかもしれません。

水なら飲んでもいいと言われたから、机の上に2リットルのペットボトルを

置いても大丈夫だと思う人もいるかもしれません。

 そういった価値観が異なるものを、「500mlのペットボトル1本を限度として

水分補給に適した飲み物を、授業に差し支えないように飲む場合にのみ許可する」

と厳密に書くのはとても大変です。それよりも、「授業中の飲食はダメ」と

原則だけ示して、後は受け手が実質的に解釈してもらう方が柔軟に対応できると

思います。

 また、ほとんどの人が授業中に飲食をしてはいけないと認識しているならば、

わざわざ文章にしなくてもみんな飲食をしないと思います。

家庭科の調理実習で、授業中だから食べちゃダメという人はいませんよね。

これはみんなが授業中だけど食べてもいいんだ、という認識を共有している

からです。「家庭科の授業では飲食をしてもいい」というルールを作っても、

そんなこと言われなくてもわかってるよ、となるだけだと思います。

 慣習というのは、とても不思議なもので文章にしなくても法律のように効果が

あり、裁判にも影響を与えます。過去に1度下した判決と同じような事例が

裁判されるときは、過去の判決を踏襲するのが一般的だからです。

中でもアメリカやイギリスは慣習法や判例を重要視していて、イギリスは

慣習法も憲法の一部となっています。

(よくイギリスに憲法がないと言われますが、日本国憲法のような単一の成文法

がないのであって、色々な法律、慣習法などが憲法の役割を果たしています)

 また、場所や文化が変わればその内容も変わります。エスカレーターの立ち位置は

関西は右、関東は左というのは有名ですね。

(エスカレーターの構造的には真ん中に乗ってあげた方がいいんですけどね……)

ただ、関西であっても関西の都道府県全てが右というわけではないでしょうし、

たまたま関東から来た人ばかりのエスカレーターでは、関西であっても

左に乗る人が多くなるかもしれません。

 法律を読み解く上では、上の方でも述べたように形式と実質、

そして法律の制定理由を常に意識しておく必要があります。

法律は絶対的なものと勘違いされやすいですが、法律に書かれたことを

そのまま守ればいいというわけではないんですね。法律が何のために作られて

どのように解釈をすべきか、これを学ぶことが法律を学ぶことなんです。

条文を暗記したり、難しい法律用語が書けるようになったりしても、

法律を学んだとは言えません。そのため、法律を学ぶためには社会の色々なことを

知らないといけません。逆に言うと、慣習法については僕のような法学部の

学生よりも、会社の上司や先輩、年上の方の方が詳しいと思いますよ。

法律って難しそうと思いがちですが、とっても身近なものだと分かってもらえると

嬉しいです。