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一般法と特別法

 世の中にはたくさんの法律がありますが、その法律の中には

似たような事柄について書かれている規定があります。

例えば、刑法199条は殺人、刑法204条は傷害の罪についての規定がありますが、

これとは別に、自動車の運転について定めた法律があり、そこにも

人を死亡させた場合や、傷ついた場合についての規定があります。

(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律……長っ!)

 このような場合どちらの法律を使えばいいのでしょうか?

正解は自動車……の法律を先に適用し、それで解決できそうにない時に

刑法を適用するのです。

 このとき、自動車……の法律を「特別法」、刑法を「一般法」と呼びます。

一般法は、その規定の大まかな概要、原則などを示したもので、

特別法は、その規定について一般法より詳しく書かれた法律のことです。

ただ、あくまで相対的な関係において特別法、一般法と呼ぶので、

この法律が絶対に一般法、というような訳ではありません。

 他の例としては、共に取引について書かれている民法と商法は、民法が一般法、

商法が特別法の関係にあります。これは商法1条2項に

商事に関し、この法律(商法)に定めがない事項については

商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる

とはっきり書かれています。

(ちなみに法律には著作権がないので、自由に引用しても大丈夫ですよ

著作権法第13条第1号より)

 

 一般的な法律よりも、特別な法律を先に使うってなんか変な感じがする、

という人もいると思います。その場合は会社をイメージしてみてください。

 一般法というのは、大まかな規定、原則が書かれていて、色々な場面に

適用できる「社長」のような役割です。対して、特別法は一般法について

より具体的に記された「部長」、「係長」のような役割です。

仕事をする中で、他の会社の人と取引をしたり、何かを決めないといけないことが

あると思いますが、いきなり社長に任せることはないですよね?

まずは社員、係長、部長と段階を得て、それでも決まらないような大きな事案だけが

社長の手によって決められると思います。

 法律も同じようなものと思っていただけると、納得するかと思います。

 もちろん特別法は、一般法の規定に従わなければいけません。

社長の意見を無視して、部長が独断で決めてはいけないのです。

 

 ただそもそもの話として、法律を普段触れていない人からすると

「一般法あれば特別法なくてもいいんじゃね?」

「特別法あれば一般法見なくてもいいじゃね?」

と思うでしょう。僕なりに考えてみると、一般法と特別法という考え方は、

1.はじめから詳しく書きすぎると、対応できなくなったときに困るから

2.国の情勢や世間の考え方が変わった時に、対応をしやすくするため

3.自治を尊重し、その立場にあった規定をするため

が主な理由で存在していると思います。

 

 1番は書いた通りで、自動車で傷つけた場合、人を刺した場合、毒を盛った場合

のように個別に書くと、とても数が多くなるのに加えて、自転車だったら?

スケートボードだったら?セグウェイだったら?のように、予想外の事態が

起こると対応が出来なくなります。(判例を覗くと、なんでこんなことになった?

というものがたまに出てきます)そのため、とりあえず一般法として

大まかな規定を書いておいて、発生件数が多いものや、少し特殊な事例に

ついては、特別法として個別に設けたほうが、実務的といえるからですね。

(法律はたびたび裁判での実務を意識した作りになっていることがあります)

 

 2番は、今の法律がかなり古いことにも関係があります。

現在使われている法律の中には、明治に制定されたものも多く、

民法、商法、刑法といった有名な法律は、所々改訂をされつつも

当時の原型を残したまま、今もなお現役なんです。

 そのため、インターネットでの取引、クレジットカード、同性婚といった

ものは、想定されていなかったんです。ただ、その法律自体を変えるとなると、

数年後に現れる新しい概念や技術によって、また変えなければならなくなるかも

しれません。ならば、特別法として新たに作るほうが、時代の変化に対応しやすい

と言えるでしょう。

 実際、会社法という法律は、元々商法の中にあったのですが、株式会社の発展や

合資会社、合同会社など様々な会社形態の登場によって、条文が増えすぎたため、

商法から独立しました。商法の中でも、会社について扱う特別法として

切り離したんですね。

 

 最後の3番目は、法律の仕組みに関係します。日本の法律は、

憲法を最高法規に、法律、政令、条例というように階層構造になっています。

下にある規定は、上にある規定に反してはいけないことになっています。

先ほど例にあげた、会社みたいな感じです。

 法律は国会で作られ、選挙で選ばれた国民の代表である国会議員によって

作られます。対して、条例は地方自治体(県や市など)で制定されるもので、

より身近なものだと思います。もちろん国が一律に「こうしなさい」と

法律で定めてもいいのですが、それぞれの地域で、財政事情や力を入れている

取り組みが違います。現場のことは現場の人に任せるのと同じように、

ある程度、自治を認めた方がより良い規定が作れるでしょう。

ただ、好き勝手されると困るので、基本的なことを一般法で定めた上で、

具体的な部分を特別法で定めてもらう、という形にしようということです。

 

 よく勘違いされるのですが、「法学部なら法律全部分かるよね?」と言われます。

すみませんが、普段使っている六法全書には載っていない法律が

山ほどあるので、法律関係全てがわかるわけではありません。

(そもそも司法試験であっても、六法は持ち込みOKなので暗記は基本しません)

そのため、知識も大事なんですが、法律をどう解釈するのか、また法的な視点から

社会の物事をどうとらえるのか、の方が大切だと思います。

 法律を学んでいると、一見無駄に見える規定や書き方が、効率を練りに練られた

ものだったり、とても重要なものだったりします。そういった考えを

少しでも皆さんに伝えられたらいいなと思っています。

 

何か質問や意見、ご指摘がありましたらぜひコメントしてください。