ゲイでノンセクシャル~人生の雨宿り~

雨ばかりの人生に、雨宿りができる場所を作りたい

茨木のり子さんの詩

 最近読んだ「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本を

すすめまくった1年間のこと」(題名長っ!)という本を読みました。

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 内容は題名の通りで、作者さん(女性の方です)が出会い系サイトを通じて

知り合った男性に、ヴィレッジヴァンガードの店長として培った知識と経験を

もとに本の紹介をする、という内容です。

 色んな男性が出て来て面白いのもなんですが、それ以外にも色んな本の

名前が出てくるのが面白くて、僕が知らない本をたくさん知れました。

 その中で、「茨木のり子」さんの「おんなのことば」という詩集が紹介されて

います。実は、僕は茨木のり子さんの詩が大好きで、名前が出てきたときに

一人で興奮していました。

 僕が茨木のり子さんを知ったきっかけは、合唱曲の「苦しみの日々哀しみの日々」

という曲を高校時代に歌ったことでした。

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この曲の歌詞が、茨木のり子さんの詩で、

苦しみの日々 哀しみの日々

それは人を少しは深くするだろう

わずか五ミリぐらいではあろうけれど 

「苦しみの日々哀しみの日々」より一部引用

という書き出しで始まります。(しかも冒頭はアカペラでとっても綺麗です) 


混声「四つの断章」より「3.苦しみの日々哀しみの日々」

  茨木のり子さんは、学生時代に戦争による空襲、貧困、飢餓などを経験しており、

19歳のときに終戦を迎えています。24歳で結婚するものの、49歳で夫に先立たれて

しまい、以後31年間に渡る一人暮らしを経験するなど苦労の多い人生だったそうです。

 ただ、そんな苦労があったからこそ命の大切さ、何気ない日常のありがたさを

しみじみと感じさせるような、優しくて温かい詩を多く書かれています。

 数ある茨木のり子さんの詩の中で、僕が大好きな詩をいくつか紹介します。

 

ぱさぱさに乾いてゆく心を

ひとのせいにはするな

みずから水やりを怠っておいて

……(中略)

自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ 

詩集「倚りかからず」より一部引用

 これは「自分の感受性ぐらい」という詩です。

この詩は読めば読むほどはっとさせられます。「ばかもの」と呼ばれているのに、

読み終えたときには清々しさを感じる、そんな不思議な詩だと思います。

(この詩も合唱曲になっていて、最後の「ばかものよ」という言葉が

より強烈に表現されています)


混声合唱とピアノのための「四つの断章」より「2.自分の感受性くらい」

 

<だいたいお母さんてものはさ

しいんとしたとこがなくちゃいけないんだ>

……(中略)

お母さんだけとはかぎらない

人間は誰でも心の底に

しいんと静かな湖を持つべきなのだ

詩集「おんなのことば」より一部引用

 これは、最初の方で紹介されていた「おんなのことば」という詩集の中の

「みずうみ」という詩です。お母さんと小学生の娘のやり取りを切り抜いた詩で、

人の心を「みずうみ」に例えています。分かりやすい表現ながら、

的確に真理をついていて、でもってすうっと心にしみる言葉の節々がとても

心地いいです。

 

もはや できあいの思想には倚りかかりたくない 

もはや できあいの宗教には倚りかかりたくない

もはや できあいの学問には倚りかかりたくない

もはや いかなる権威にも倚りかかりたくない

ながく生きて 心底学んだのはそれぐらい

じぶんの耳目 じぶんの二本足のみで立っていて

なに不都合のことやある 

倚りかかるとすれば それは 椅子の背もたれだけ

詩集「倚りかからず」より引用

  この詩は、茨木のり子さんが73歳の時に書かれた作品です。

(茨木のり子さんは79歳で亡くなっています)

夫に先立たれて、長年一人で生きてきた茨木のり子さんが、人生の最後に出した

結論のような詩です。一人で生きていくことの力強さを感じます。

  個人的には、倚りかからずの「倚」と椅子の「椅」という文字の違いが

味を出しているなと感じます。(意味的には違いはないそうです)

 ちなみに「寄」という字だと、「傾いてもたれかかる」というニュアンスで、

「倚」や「椅」は「木によりかかる」というニュアンスがあるそうです。

木のように大きなもの、動かないものに頼るという意味があるのかもしれません。

 直前で「二本足のみで立っていて」不自由はないと言っておきながら、

椅子にはよりかかるという対比が、年齢や寿命というものを感じさせて

何とも言えない余韻を残していますね。(これも合唱曲になっています)


混声合唱とピアノのための「四つの断章」より「4.倚りかからず」

 

(せっかくなのであと一つの「水の星」という曲も載せておきます)


混声合唱とピアノのための「四つの断章」より「1.水の星」

 茨木のり子さんを知らなかったという人、それから合唱にあまり興味が

なかったという人は、是非曲を聞いて、詩を読んでみてください。