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弁証法「テーゼ⇔アンチテーゼ=アウフヘーベン」

 以前、帰納法と演繹法という基本的な推論方法を紹介しました。

今回は「弁証法」という方法を紹介します。

 弁証法は、問題として挙げられた「テーゼ」に対して、反論や矛盾である

アンチテーゼ」をぶつけます。そしてテーゼとアンチテーゼの両方を考慮する

ことで、問題が止揚(より良いものになる)されて「アウフヘーベン」されます。

アウフヘーベンされたものは、「ジンテーゼ(新たなテーゼ)となり、更なる

アンチテーゼ、アウフヘーベンと続いていくことで、より洗練されたよい考えが

生まれる、これが弁証法というものです。

 具体例を挙げると、「本を読みたい」というテーゼに対して、「本は重たいし、

持ち運びに不便」というアンチテーゼが出てくれば、「電子書籍にしよう」という

アウフヘーベンが出てくるでしょう。また、「電子書籍にする」という

ジンテーゼに対して、「バッテリーが心配」というアンチテーゼが出てくれば、

「スマホではなく電子書籍専用の端末を作ろう」というアウフヘーベンが

生まれる……このようにして、次々と問題を解決しながら議論を進めていくことが

できるのです。

 この弁証法を確立した人は、ドイツのヘーゲルという人です。

テーゼはドイツ語で「命題」、アウフヘーベンは「auf | heben(haben)」の分離動詞

(英語のbecome,understandみたいな前置詞+動詞で新たな意味を持つ言葉)

元々は「拾い上げる」といった意味があります。

(僕は、第2言語でドイツ語を履修しています。)

ヘーゲルの思想を理解するためには、ドイツの偉大な哲学者であるカントの思想を

知っていないといけないのですが、正直難しすぎるのと、説明しないといけない量が

膨大過ぎるので割愛します。(そのうち記事にするかも?)

 本当にざっくり言ってしまえば、カントの思想はどこまでも理論的で、

理想を突き詰めた考えでした。(ちなみに「永久平和のために」という本で、初めて

世界機構、つまり国際連盟(現在あるのは国際連合)の概念を提唱した人でも

あります。これだけでもカントのすごさが伝わってくるかと思います。)

 その反面、ヘーゲルは現実に則した考えをしています。大まかに説明すると、

理想は現実にならなければ意味はなく、法や社会を通じて理想と現実が一致することが

大切だと説いています。そして自由を本質とした世界の最高原理のことを

絶対精神」と呼び、歴史というものこそが絶対精神を追い求める過程であると

説きました。分かりやすく言えば、歴史として残されたものはそれだけ価値がある

ものであり、そうでないものは歴史として残されずに滅んでいくものだ、ということ

でしょう。

 そして絶対精神を求める中で、社会秩序を維持する「法」と、個人の内面や

良心を重視する「道徳」が弁証法によってアウフヘーベンされると、

自然の愛によって結ばれている「家族」になり、その家族と独立した自由と平等が

存在する「市民社会」がアウフヘーベンされると「国家」となり、理想の人間関係の

ことである「人倫」を実現することができると説いています。

 弁証法は、自らの思想を説明するためにヘーゲルが用いた道具だったんですね。

(頑張って高校時代の倫理の授業を思い出したのですが、間違えていたら

ごめんなさい。正直、難しくて大まかにしか分からないです……)

 アウフヘーベンという言葉は、2017年に小池百合子都知事が用いたことで、

流行語大賞にも選ばれていましたね。(もう2~3年前の話なんですね……)

この弁証法は色々な場面で使える便利な考えですが、折衷案は弁証法じゃないことは

注意です。

 例えば、「今日の夕食はカレーがいいな」というテーゼに「グラタンがいい」

というアンチテーゼ(と言えるのかは怪しいですが)を持ち出し、

「じゃカレーグラタンにしよう」というのはアウフヘーベンとは言えません。

 アウフヘーベンとは、現在のテーゼ、アンチテーゼよりも高い次元のレベルに

持っていくのが本質であって、「yesかnoか」「右か左か」のような対立する概念の

解決を目的とはしていません。

 ただ、反対意見を出してみるという点では有効な手段ではあると思います。

相手の立場に立つことで、自分の意見が変わるかもしれません。

(やっぱり自分の意見の方がいいね、という再確認にもなります)

今社会で求められているクリエイティブな発想には、弁証法が役に立つと思いますよ。

 余談ですが、残酷な天使のテーゼの「テーゼ」はこの命題という意味のテーゼ

だと思います。また、サビに出てくる「ほとばしる熱いパトス」の「パトス」という

のはアリストテレスが提唱した、「ロゴス、パトス、エートス」に由来します。

大雑把に言ってしまうと、「ロゴス=論理、パトス=情熱、エートス=信頼」の

ことで、人を説得するためにはこの3要素が重要だと説いています。

 他にもミスチルの[es]~theme of es~の「エス」とは、フロイトが用いた無意識の

領域における、本能的なもののことで、別名イドとも呼ばれます。

大まかに説明すると、人の意識のことをエゴ(自我)と呼び、その下には

無意識のエス(イド)という本能があって、それをスーパーエゴ(超自我)という

理性が抑え込んでいる、という考え方です。

 聞きなれない哲学の用語も、意外と身近に使われていたりするので、

分からない言葉は日頃から調べる癖をつけておくと、新たな発見があると思いますよ。