ゲイでノンセクシャル~人生の雨宿り~

雨ばかりの人生に、雨宿りができる場所を作りたい

知っていてほしい相続~同性カップル編~

 相続と聞くと、とっても面倒くさくて、家族で争っているイメージが強いと

思いますが、実際なかなかに複雑です。ただ、知らないと損をしたり、思わぬ

トラブルに巻き込まれることも少なくありません。そこで、法学部の端くれである

僕が大雑把に解説しようという記事です。今回は同性カップルの相続について

的を絞って書きたいと思います。

 今回の記事は、同性カップルで弁護士をされている南和行さんと吉田昌史さんの本、

「同性婚 私たち弁護士夫夫です」から引用、参考にさせていただいた部分が

あります。(おもに遺言の部分です)おふたりの出会いから、弁護士を目指した

きっかけ、弁護士として見えてくる法律問題が分かりやすく書かれていて、

僕も愛読している本です。同じく「僕たちのカラフルな毎日」には、出会いや

思い出、結婚式を挙げる様子などがメインで書かれていて、読みやすい本です。

この場を借りてオススメさせていただきます!

同性婚 私たち弁護士夫夫です (祥伝社新書) [ 南和行 ]

価格:858円
(2020/2/2 15:37時点)
感想(1件)

 

僕たちのカラフルな毎日 弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記/南和行/吉田昌史【1000円以上送料無料】

価格:1,540円
(2020/2/2 15:39時点)
感想(0件)

 まず、相続というのは簡単に言えば遺産、借金、保険金、親権などを遺族に

引き継がせようという制度です。

日本では法律婚主義、またの名を届出婚主義という仕組みが取られており、

法律の定める手続、簡単に言えば結婚届を出すことによって初めて婚姻関係が

認められます。また、単に結婚届を出すだけではなく、結婚しようという気持ち

(意思)も必要とされています。そうしないとストーカーが勝手に結婚届を出したり、

偽装結婚や遺産目当てのように結婚制度を悪用されたりするからですね。

 細かい話は置いておいて、要するにどれだけ愛し合っていようと、どうみても結婚

しているだろというカップルであっても、結婚届を出さない限りは「赤の他人」と

いうことになります。同じ家に住んでいるならばただの「居候」に過ぎないのです。

 事実婚、内縁関係はもちろん、パートナーシップ協定を結んだ同性カップルも、

結婚届を出していない以上、法律上では結婚していないことになります。

 結婚していないと扱われることの問題点として、相続が挙げられます。

法定相続という法律によって定められた相続には、「親」「子供」「兄弟」「配偶者」

が相続を受けることになっています。結婚していない=配偶者ではないことになり、

相続を受ける権利がもらえないんですね。

 そのためもし同性のパートナーが死んでしまえば、一緒に住んでいた家や

共有していた財産を相続する権限はパートナーの家族の方にあって、何一つ相続

できないまま家からも追い出される可能性だってあるんです。配偶者ではなく

居候なので、追い出されても文句を言えないのです。

 そのため、かつて「養子縁組」という形で相続を受け取れるようにしていました。

養子縁組を行うと、法律上では「親と子供」という関係になり、相続を受けることが

できます。この場合、自動的に年上が親、年下が子供となります。

 ただ、養子縁組は本来養子を引き受けるための制度であり、同性カップルの相続の

ための制度ではありません。そのため、法律の趣旨に反している(法律用語で権利の

濫用と言います)として効果を無効にされたり、養子縁組を受理してもらえなく

なったりしました。

 また、親と子の関係になってしまうので、同性婚の制度が今後整ったとしても、

結婚できなくなるという弊害も起こってしまいます。

 ただ、法律の世界、おもに民法の世界には「契約自由の原則」というものが

あります。これは法律に定められている内容でなくとも、本人たちがOKなら

勝手に内容を変えた契約をしていいですよ、という原則です。

 例を挙げると、本来お店の商品は表示された価格で買わなければいけませんよね?

でも値引き交渉をしたり、トラブルが起こって無料にしてもらったりすることも

あります。このように、本人たちがOKならば値段という決められた内容を変えて

しまってもいいんです。

 このように、相続も法律に書かれていない形の相続を行うことができます。

一番多い例は「遺言」です。一般的に「ゆいごん」と呼ばれますが、法律の世界では

「いごん」と読みます。遺言には、死んでしまった人が生前に残した意思が残されて

おり、基本的にはその意思に従わなければならない強い効果を持っています。

 そのため、本来子供と兄弟で分け合う遺産を、全部自分の子供に相続してほしいと

書かれていれば、その遺産は全て子供に相続されます。

 また遺言には、本来の相続相手以外に、赤の他人や友達といった「第三者」にも

「遺贈」という形で相続することができます。簡単に言ってしまえば、事実婚や

同性カップルであっても、遺言を残しておけば相続することができるのです。

 じゃ遺言を作ろう!という気持ちになると思いますが、遺言には大きく分けて

2種類存在します。一つは遺言を残した日付、氏名を本人が書いて印鑑を押しただけの

自筆証書遺言、もう一つは公証人役場に行って、弁護士などに遺言を制作してもらう

公正証書遺言です。

 前者は、紙とボールペンと印鑑があればいつでも誰でも作ることができますが、

後者はわざわざ役場まで行って、お金を払わなければ作ることができません。

ただ、どちらの遺言なのかによって相続、遺贈の手続きが変わってしまうのです。

 自筆証書遺言の場合、遺贈を行う前に家庭裁判所で遺言を確認する「検認」という

ものを行います。というのも、本来法定相続人である親、兄弟、子供が受け取るはずの

遺産を、いきなり第三者にあげてしまうと言っているので、一体お前は誰なんだ?

どうしてお前は遺贈を受けたのか?という親族の疑問が出てくるのは当然だと

思います。そのため、この検認の手続きを行わなければ、遺産を相続することが

できないのです。

 遺贈を受ける人が検認をしれもらおうとすれば、遺族の人たちと一緒に家庭裁判所に

呼び出されることになります。

 さらに、遺言は封を切った時点で効果を発揮するものであるため、勝手に封を

切ってしまうと、書き換えやすり替えを疑われてしまうため、自筆証書遺言の場合、

家庭裁判所で封を切られます。その後中身を遺族含めて全員に開示するのです。

 もしも同性カップルであることを遺族に伝えていない場合、実質的に

カミングアウト、アウティングとなる恐れがあるのです。家族を亡くしたばかりの

遺族が、遺産の相続を受けられないうえに、亡くなった人は同性愛者で、しかも

その相手が遺贈の相手であると知ってしまえば、冷静な判断ができずに、恨みや

怒りの矛先になる危険も十分にあります。遺されたパートナー、遺族のどちらに

とっても検認によって深く傷つくことになるでしょう。

 一方、公正証書遺言にはこの検認を行う必要がありません。ただ、銀行などの

金融機関が、遺贈が行われたことを遺族に知らせることはあります。だからといって、

遺族に説明をする義務や遺言を開示する必要もないため、少なくとも

傷が癒えてきて、冷静になってから説明を行うことができるのです。

 また遺族に開示しなくてもよいため、手紙のような形で思いや気持ちを、

カミングアウトやアウティングを気にすることがなく書くことができます。

(これを付言事項といいます)また、万一パートナーと遺族が争った時のために、

こういう思いでパートナーと付き合って、遺贈を行ったんだということを書いて

おけば、争いを避けるための切り札にもなるのです。

 もしも同性カップルで遺言を作るならば、公正証書遺言で作るべきでしょう。

また、同性カップルでなくとも、公正証書遺言のほうがトラブルが少なくなるため、

今にも死にそうといった緊急事態でなければ、公正証書遺言を選ぶべきであると

思います。また、あんまり相続や遺言について知らなかったという人は、

この機会に是非考えてみてください。遺言は死にかけた人だけが残すものではなく、

もしもの時のために残しておく「保険」のようなものだと思います。

 また遺言を一緒に書くということは、結婚届を出すように二人の関係をつなぎ

とめる役割もあると思います。子供ができなかったり、周囲にカップルであることを

知らせることができなかったりする同性カップルは、「愛」が失われると、

簡単に別れてしまいます。パートナーシップ協定は、地域によってはまだ

できていないところもありますが、遺言であれば地域を選びません。

 僕は法学部の一人として、面倒だと避けられるのではなく、もっと遺言についての

認識が広まってくれると嬉しいと思います。