ゲイでノンセクシャル~人生の雨宿り~

雨ばかりの人生に、雨宿りができる場所を作りたい

「1625」と「王道進行」

 前回に引き続き、音楽理論について解説したいと思います。

今回は「1625」と「逆循環」と呼ばれる有名なコード進行です。

まず、「1625」とはルートの音(ハーモニーの一番下の音で、Cmの「C」や、

G7の「G」みたいにコードネームになる音のこと)がⅠ→Ⅵ→Ⅱ→Ⅴ→Ⅰと動く

ことから名付けられたコード進行です。このコード進行の特徴は、4つのコードを

グルグル循環することができることです。

 文字の説明だけでは分かりにくいので具体例を出しましょう。

「Ⅰ→Ⅵ→Ⅱ→Ⅴ」は、Cのコードで言うと「C→Am→D7(Dm)→G7」ですね。

CとAmは平行調なので実質イコール、D7→G7は前回説明した「ツーファイブ」で、

ここではⅣ→Ⅴの代わり(コードで言えばF→G)として使われています。

そして最後はG7からCのドミナントモーション(Ⅴ7→Ⅰ)で、

Cに戻ってくることで、再び循環することができます。

 つまり、元の形は「C→C→F→G」つまり「Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ」のカデンツなんですね。

この循環コードは、単純ながら完成度が高いです。

 まず、Ⅵの音(ここではAm)でマイナーコードを含むこと、次にⅡの音で

ノンダイヤトニックコード(ここではD7、FがF♯に変化している)が出てくること、

そして、Ⅵ→Ⅱ、Ⅱ→Ⅴ、Ⅴ→Ⅰという3回の4度進行を含んでおり、非常にパワーが

あること、が挙げられます。

 さらに、前回説明した「裏コード」との親和性が高いこと、ⅥをⅥ7にすると

Ⅰ6(Ⅰの和音+6音、つまりAの音を加えた形)と同じ和音になるため、

コード内での入れ替えがしやすいこと、などアレンジの幅が広いこともポイントです。

 具体例で説明すると、G7とD♭7は裏コードの関係にあり、代理コードとして

用いることができます。(詳しくは前回の記事をどうぞ)

 そこで、G7の代わりにD♭7を置いてみると、「C→Am→D7→D♭7→C」となり、

「D→D♭→C」の半音進行が作れます。さらに、「D♭、A♭」という非和声音

(臨時記号がつく音)がD7の「F♯」と加えて多くなることで、調性が

あいまいになる(この場合、Cメジャーであることが分かりにくくなること)ため、

どこか夢心地な進行になりますね。(なんとなくディズニー感がある進行ですね)

 またⅥ7は「A、C、E、G」、Ⅰ6は「C、E、G、A」を構成音に持っていて、

全く同じ音を持っています。そのため、ⅥがⅥ7になると、CとAmの区別がほとんど

つかなくなります。そのため、「Am7→C→D7→G7」としても

違和感がないんですね。さらに、Cを「C on G」(ベースの音をGにするという指示)

D7を「D7 on F♯」にすると、「A→G→F♯→G」という滑らかなベースラインを

作れますね。(しかも臨時記号がつくF♯を含んでいて、盛り上がりもいい感じです)

 このように、シンプルイズベストなコード進行であり、さらに変化を加えていけば、

この循環コードだけで1曲かけちゃうぐらいに万能なコードなんです。

 そして、この「1625」を変形させた形に「逆循環」というコード進行があります。

逆循環とは、名前の通り「1625」進行の1小節目と2小節目を逆にする、

つまり「2516」という形にしたものです。

 具体例をあげると、「Dm→G→C→Am」ですが、このままの形ではあまり

使われず、アレンジを加えた形で使われることが多いです。

「F→G→Em→Am」(Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ、4536ですね)という形の方が

一般的かもしれません。

 なかでも「F△7→G7→E7→Am」という形(Ⅳ△7→Ⅴ7→Ⅲ7→Ⅵ)は

王道進行」と呼ばれるコード進行で、曲のサビに用いられるほどのインパクトを

持つ進行です。「△7」はメジャーセブンスを表す省略の記号で、「M7」と表記

されることもあります。メジャーセブンスは普通のセブンスとは違い、7音を

半音上げた形で、(F△7はF、A、C、「E」となり、F7はF、A、C、「E♭」です)

ルートとセブンスが半音でぶつかること(この場合FとE)、Ⅰの和音とⅢmの和音を

組み合わせたコード(F△7には、F、A、CというFのコードと、A、C、EというAmの

コードが含まれていますね)であることから長調と短調の中間のような切ない和音

なるのが特徴です。

(ちなみに普通のセブンスは、増4度を含むため不安定なコードになります)

 平井堅の「瞳を閉じて」、槇原敬之の「もう恋なんてしない」、スピッツの

「ロビンソン」といった、誰もが感動する名曲には、この王道進行が

使われているんです。(曲選は完全に僕の趣味です♪)

 王道進行はスタートの音がⅣ(Cの場合はFの音)というサブドミナントで

スタートするため、比較的不安定になります。(Ⅳの音はⅠの和音の中に基本

含まれていないので、調性がぼやけるからですね)ただ、F△7をAm on Fと捉えて、

AmのⅠと解釈することもできます。ただこの場合もⅠの和音がⅥに乗っているので、

三角のつみきの上に載せていくかのような不安定さがあります。

 次のG7は、セブンスにすることでFの音をつなげることができるため、

F△7→Gよりも滑らかになります。GはⅤの音(AmならⅦ)なので、

かなり前に進む力があります。(どちらにしろCまたはAmに進もうとします)

今にも崩れそうなつみきみたいなイメージです。

 そして、次の和音はCでもAmでもなくEmです。恋愛ドラマならこの和音こそが、

フラれたシーンであるぐらい、裏切りの和音と言えます。Ⅲの和音はⅠにもⅤにも

変化する(代理コードとして置くことができる)曖昧な和音であり、まさに言葉を

濁してフラれたようなもどかしさがあります。

 またGとEmは平行調であり、先ほど進行を滑らかにするために付け足された

G7のFが、Eへの導音となってくれていますね。この点でも、G7のFは重要です。

G7とEm7は音がほとんど同じコード(Emにも音を滑らかにするためのセブンスが

入っています)でしかもマイナーコードです。高まったテンションが行き場を

失って、すうっと感情が引いていくような感じです。

 そして最後はEm7→Amという4度進行でゴールに到着します。

ただ、E7ではなくEm7なので、ドミナント特有の力強さはなく、また終着点も

Amとマイナーコードです。でも、直前のEm7で感情を吐き出したからか、

Amにはすがすがしさを感じます。まさに失恋したけれど、それでも前を向こうとする

ような切なさや、流した涙が乾いていく様子が感じ取れます。ずっとつきまとっていた

セブンスの音が最後の最後でなくなることも、未練を断ち切ったような印象ですね。

 感情の高まりと、その終着点への緩急のバランスがとてもいいのが、王道進行の

最大の特徴です。また、終着点がAmであることからも、マイナーコードよりの

循環コードと言えます。日本人はマイナーコードの方が心に響く傾向にあるみたい

です。(日本の雅楽、演歌、民謡などはマイナーコードばかりで、メジャーコードが

日本に入ってきたのは、明治期のキリスト教と一緒にやってきた讃美歌の影響だと

されています。それだけマイナーコードは日本人の奥深くに根付いているのです)

 今回「1625」と逆循環、その応用である「王道進行」(Ⅳ△7→Ⅴ7→Ⅲ7→Ⅵ)を

紹介しました。これらは、アレンジの幅が多いため変形させた形で使われることも

多いです。その分たくさんの曲に使われているので、知っているだけで色々な

曲のコード進行を一気に覚えることができます。複雑そうに見えて、4度進行と

ツーファイブ、平行調の代理コードという基礎だけで、十分に分かる進行なので、

良かったら色んな曲のコード進行を調べてみてください。あっ循環コードだ、

あっ王道進行だ、と分かるだけで一気にその曲と仲良くなれますよ!